コウモリって何? コウモリ

みなさんはコウモリを見たことがあるでしょうか?おそらく一度くらいは飛んでいる姿を見たことがあるでしょう。夕方,薄暗くなってきたころにひらひらと上空を舞っている小さな黒い固まりがコウモリです。日本の本州以南に生息しているアブラコウモリという種類は都会でもごく普通に見られるコウモリです。みなさんの中には,子供の頃靴を投げてそれにアタックしてくるコウモリで遊んだことがあるという人もいるかもしれません。ただ、コウモリは夜に活動しているということと、飛んでいるということで、身近にいてもその存在に気づいていない人がほとんどです。

コウモリは世界中に約1000種類がいるといわれています。これは地球上の全哺乳類のうちの4分の1を占めていて、ネズミの仲間(約1700種)の次に種数が多い分類群です。その分布範囲も熱帯域から夏期の北極圏にまで及びます。これほど広い分布域を持つ哺乳類は他にはヒトやペット、家畜くらいかもしれません。

さて、コウモリは大きく二つのグループに分けることができます。一つは熱帯地方などに分布するオオコウモリの仲間、もう一つは北極圏まで分布する小コウモリの仲間です。オオコウモリはその名の 通り大型で(20-1500g)もっぱら植物食(果実、花、花蜜や花粉)です。世界中で約175種が知られています。日本にも現在、沖縄と小笠原地方にオオコウモリが生息していて、小笠原のオガサワラオオコウモリは国の天然記念物に指定されています。一方、小コウモリはやはりその名の通り小型のコウモリで(1.5- 150g)、様々なもの(昆虫、魚、哺乳類、は虫類、両生類、血、果実、葉などなど・・・)を食べます。これら小コウモリの大きな 特徴は、超音波を使って餌を探すということです。この、コウモリの餌の取り方については後ほど詳しくお話しします。

日本には30 種以上の小コウモリが知られていて(日本の哺乳類の中の3分の1を占める!!)、すべて昆虫食です。 よく、「吸血コウモリってほんとうにいるの?うちの近くに住んでい るコウモリは血を吸うの?」といった質問をされます。血を吸う(本 当は「吸う」のではなく、「舐める」のですが・・・)コウモリはいます!でも、世界中の1000種類のコウモリのうち、南米に分布するわずか3種類だけです。

さて、みなさんが「コウモリ」と聞いて思い浮かべるものの一つとし て洞窟が挙げられると思います。よく見かけるコウモリの絵や写真は だいたい洞窟の天井にぶら下がっている姿です。洞窟というのはコウ モリにとって重要なすみかです。しかし、コウモリのすみかは洞窟に限られたものではありません。フルーツバットといわれるオオコウモ リの仲間は、熱帯の森の樹木のてっぺんを主なすみかにしています。 また、日本にも多く生息する小コウモリの仲間は多種多様な場所をすみかとして利用しています。先ほどでてきた洞窟はもちろんのこと、樹洞(樹木のうろやキツツキが作った巣のお古など)や岩の割れ目、アブラコウモリは家屋専門の!コウモリです。海外の変わった種類では自分で葉っぱを縫い合わせてテントを作り、そこをすみかにするテントコウモリなんてのもいます。このように、コウモリ=洞窟といったイメージがありますが、実は洞窟以外にもいろいろなすみかを利用していて、日本に生息する約30種の小コウモリのうち、洞窟を利用するコウモリは半分以下なのです。

アブラコウモリ以外のその他のコウモリは樹洞性といわれるコウモリです。ですから、樹洞のできるような大きな木が減ってきた昨今、そこをすみかにしているようなコウモリも個体数が激減しているといわれています。また、洞穴性(洞窟をすみかにする)のコウモリも、洞窟の観光地化など によって個体数が減少している可能性があります。

次に、すみかでのコウモリの生活について話したいと思います。すみかにおいてコウモリはコロニーという集団を作ります。なかには単独や数頭ですみかにいるコウモリもいます。アメリカにいるメキシコオ ヒキコウモリという種類は洞窟の中になんと2000万頭!ものコロニーを作るそうです。その他にも数十万頭のコロニーを形成する種類もいくつか知られています。日本のコウモリでは洞窟に数千頭のコロニーを作る種類や、家屋に数千頭のコロニーがある場所もあります。コロニーは雌だけで形成される繁殖コロニーや、雄がごくわずかにいるハーレム(!),雄雌ごちゃまぜのものなど,種類や季節によって様々な構造になります。

コウモリはあまりにも種類が多く、その生態も多様なのでここからさきはみなさんの身近である日本のコウモリについてお話します。コウモリは外にでない昼間をすみかで過ごすわけですが、その間体温や呼吸数を極端に下げて(トーパーといいます)エネルギーの消費を最小限に抑えます。夕方になるとすこしずつ活発になり(覚醒)餌を取りに飛び出すのです。冬になるとコウモリは冬眠にはいるのですが、このときもトーパーをおこないます。このときは何週間も動かずに、ごくたまに水を飲んだりするために覚醒します。それと、雌のコウモリがすみかでおこなうこと、それは子育てです。日本のコウモリは大体6月下旬から7月上旬にかけて赤ちゃんを産みます。種類によって違いますが、一回に産む赤ちゃんは1〜3頭です。コウモリは当然 哺乳類ですから、お母さんコウモリは赤ちゃんに母乳を与えます。お母さんコウモリがねぐらにいる間、赤ちゃんはお母さんのおなかにしがみついています。夕方になってお母さんが餌を取りに行くときは赤ちゃんは置き去りにされて、赤ちゃん同士肌を寄せ合い暖をとっています。赤ちゃんコウモリは約1ヶ月で大人と同じ大きさになり、自ら餌をとりに飛び出します。そうして次の冬眠に備えるのです。【志水謙祐・嶋田泰也】