秋が危ない オオスズメバチ

秋になると、野山で遠足中の児童がスズメバチの集団に襲われたというマスコミの報道が話題になります。ハイキング、キノコ採り、狩猟中の人がスズメバチに襲われて死亡することもあり、年平均36人が犠牲になっています。

スズメバチの仲間は日本に16種がいて、オオスズメバチのように体長4センチメートルもある世界最大種から1センチメートルほどのクロスズメバチまでその大きさはいろいろで、攻撃性や毒の強さ、営巣場所、巣の規模なども異なります。晩秋まで活動するオオスズメバチは、浅い土中に直径が1メートルに達することもある巨大な巣をつくり、巣内には数百頭の働きバチと、その数倍のハチの子がいます。

人を攻撃するのは働きバチだけで、夏以降その数が増えるとともに巣を守る習性が強くなり、巣に近づくヒトや動物などを襲います。毒針は産卵管の変化したもので、10種類以上の物質が含まれた複雑な毒液は、ヒスタミンなどヒトの体内の生理活性物質も含まれ、その矛先は大型ほ乳類に向けられています。また、空中に噴霧された場合は、仲間への警報や攻撃の信号となります。

オオスズメバチは、巣へ10メートルくらいまで近寄ると、守衛役の働きバチがすぐにかぎつけます。最初は相手と向かい合ってその周りを上下に飛びながら、大顎でカチカチ・・・・・という音をたてて威嚇します。こんな時は、伏し目がちにして静かに後ずさりし、その場を離れます。急に動くと頭、目、黒い衣服などを狙って飛びかかり、噛みついて何度も刺します。

刺されたら、とにかく現場から離れて、近くに水があれば水で流しつつ、刺された部位を冷やします。蜂毒にアレルギー体質の人は一刻も早く病院で処置してもらう必要があります。

一方でスズメバチ類の幼虫や蛹は栄養豊かなタンパク源として、日本や東南アジアの国で食用とされてきました。この地域の民族に共通する黒い髪や瞳は、強力な天敵としてのヒトへの攻撃の標的でもあるのです。  【松浦 誠Nov./Dec.2002 470