山に入るときはスッピンで スズメバチ

夏の野山で活発に活動するオオスズメバチは、整髪料やアイスクリームなどにも含まれる香り成分が3種類組み合わさると、その香りを攻撃の合図と認識することが分かった。いずれもオオスズメバチの毒液に含まれており、番兵バチが敵と戦っていると理解するらしい。玉川大学農学部の小野正人・助教授らのグループが、7日付の英科学誌ネイチャーで発表する。

 3種類の香り成分は2−ペンタノールなどアルコール系2種とエステル系の揮発性物質。バナナやリンゴなどの果物や花のほか、アイスクリームやジュースといった食品や香水、整髪料などに使う天然香料の多くにも、このいずれかが、ごく微量だが含まれている。

 これらの物質を化学的に合成。単独、2種類、3種類の組み合わせで染み込ませた濾紙(ろし)を巣の前に置き、スズメバチの行動を比べた。すると、単独ではほとんど反応はなく、2種類の組み合わせでも多いもので15匹だった。一方、3種類すべてを混ぜた濾紙には敏感に反応し、スズメバチの毒液を溶かしたときと同数の30匹が興奮して針を突き立てた。

 これまでもスズメバチは、髪や眼球、帽子など黒いものを狙って攻撃することが知られていた。しかし、何が攻撃モードへのスイッチを入れるかはわかっていなかった。

 日本では、年間20人前後が、スズメバチに刺されて死亡している。ハチの巣に気付かないうちに刺された例もある。小野助教授は、整髪料や食べ物などの組み合わせがハチに攻撃指令を出したためとみている。

 小野助教授は「ハイキングなどに行くときはハチが狙う黒い洋服や帽子を避けるとともに、整髪料や香水などをつけない方がいい」と注意を促している。

(03/08/07朝日新聞)