怠けることの意味? 社会性昆虫
アリやハチ(社会性昆虫)の働きアリや働きバチ(ワーカー)は一日中働き詰めに働いていると思われている。ところが、ある瞬間をとってみると、コロニー内の6〜7割のワーカーは、コロニーにとって意味のある「働いている」とみなせる行動をしていない。これらの多くはいずれ働きだすが、それとは別にずっと働かない固体がいることが明らかになってきた。

個体識別をした行動追跡により、カドフシアリでは、コロニーの働きアリの1〜2割が一シーズン中ずっと働かなかった。系統的に遠いトゲオオハリアリやミツバチでは、一生ほとんど働かないものの存在がすでに知られていたが、「怠け者」は社会性昆虫で広く一般的に見られる可能性が高まった。

さらに、今回の研究では、コロニーから「働き者」と「怠け者」を除去するとほかの個体の行動がどのように変化するのかを追跡した。「働き者」の除去時に、不足する労働力を補ったのは「怠け者」ではなく、次によく働いていたものだった。「怠け者」が除去されると、他個体の行動はほとんど変化せず、働くものは働き続けた。「怠け者」は病気、老齢あるいは繁殖ワーカーであるため働かない可能性もあるが、「怠ける」ことがコロニーにとって不可欠なので存在するのかも知れない。研究を続け、「怠け者」の意味を明らかにしていきたい。
               (長谷川英祐/北海道大学大学院農学研究科)
JAN./FEB. No.477