好物禁食 アカネズミ
森林に住む動物にとって、秋に大量に実るドングリは、重要な食料である。実際に秋になると、野ネズミは冬に備えてせっせとドングリを集め蓄える。

ところが、野ネズミの一種であるアカネズミにミズナラのドングリだけを与えて体重変化や消化率を調べる実験を行ったところ、アカネズミはみるみるやせていき、15日間で8頭中6頭が死亡してしまった。タンパク質の消化率も著しく悪化し、ドングリを食べれば食べるほど体内のタンパク質が失われてしまうという状態になっていた。

その原因は、ミズナラのドングリに乾燥重量あたり約9パーセントも含まれているタンニンにあることが判明した。赤ワインなどにも含まれるタンニンは、消化管を傷つけたり、体内のタンパク質と結びついてタンパク質の吸収を妨げる作用がある有害成分。ちなみに、タンニンの濃度はドングリの種類によって異なり、コナラでは3パーセント程度しか含まれていない。

この結果、ミズナラのようなタンニンを多く含むドングリは、潜在的には、「体に悪い」餌であることが明らかになった。その一方で、アカネズミがミズナラのドングリを頻繁に利用していることも、また事実である。体に悪いドングリを利用するため、何らかの「工夫」をアカネズミは行っているものと考えられるが、詳細は現在研究中である。
               (島田卓哉/森林総合研究所関西支所)
JAN./FEB. No.477