樹木の昼寝と日傘?!   樹木

樹木の葉っぱが,昼間に「日傘」をさして「お昼寝」 をしている!?という話です。「おいおい,葉っぱが昼寝なんかす るかよ」と思われる方もいるかもしれませんが,ちゃんと昼寝をす るのです。寝る子は良く育つと言いますが,昼寝をするタイプの樹木は,より長い間,光合成を行うことができます。また,ここでの 樹木の起きている状態とは,日中の光合成をさかんに行っている時間帯をさすことにします。

日中の太陽光が十分に当たる時 間帯でも,その光が強すぎると様々な要因によって光合成速度は低 下します。特に,昼間は最も日射が強く,太陽光が直接当たっている上部の葉では,葉温が40〜50℃に達することもあります。葉温がこの温度に達すると,水不足に陥ったり,内部の酵素が熱変性 を生じたりします。乾燥や高温に耐えるため,葉っぱは気孔を閉じて水分の放出を防 ぎます。しかし結果として,光合成速度は低下してしまいます。

この日差しが強い昼間に,一時的に光合成速度が低下することを,植物の「お昼寝現象」と呼びます。そして,日差しの弱まる時間帯になると,再び気孔を開いて光合成を開始するのです。暑く日差しの強い時間帯に気孔を閉じていたのは,このときのためだったのですね。

 「お昼寝現象」はすべての葉っぱで起こるのではなく,上部の強い日差しを浴びる一部の葉でのみ起こります。一方,そのすぐ下についている葉は,上の葉が強い日射を防いでくれるので,光合成を続けることができます。この現象は,イタヤカエデという傘型の樹冠を持つ樹木で観察され,林冠表層部についている葉はそのすぐ下についている葉にとって,「日傘」のような役割をしているらしいということが分かりました。  

このように,樹木も人間と同様に夏場の暑さや日差しに耐える, 素晴らしい機能を発達させていることが分かります。 【志水謙祐・嶋田泰也】